赤字経営から脱却し立て直しを図る方法

赤字経営から脱却し立て直しを図る

東京商工リサーチによると、2021年度の赤字法人は65.3%で、多くの企業が赤字でも経営を続けています。今黒字でも新型コロナウイルス感染拡大の影響のような環境や、景気、トレンドの変化などにより、いつ赤字に転じるか分かりません。

赤字になると、倒産に追い込まれるのではないかと不安に思う経営者もいるでしょう。しかし、企業は赤字だからといってすぐに倒産するのではなく、黒字でも倒産することがあります。倒産するのは、現金がなくなった時です。つまり、買掛金の支払いや借入金などの債務の弁済が出来なくなったら倒産となります。

ただし、赤字状態が続くと、負債が積み重なり資金繰りが悪化し、倒産が近づいてきます。赤字経営から脱却し立て直しを図るためには、倒産となる前に赤字を解消し、黒字に転換するための適切な策を講じる必要があります。赤字経営は企業にとって深刻な課題ですが、適切な対策と戦略を用いれば立て直すことは可能です。
本記事では、赤字経営から脱却し立て直しを図る方法を解説します。

赤字とは

赤字とは、収入が支出よりも少ない状態を指します。決算書(損益計算書)で税金を支払った残りの最終的な利益である「当期純利益(税引後当期純利益)」がマイナスであれば赤字、プラスであれば黒字といいます。

当期純利益 = 総収入 − 総費用

企業が得た総収入から、総費用(売上原価、販売費および一般管理費、税金、金利、その他の経費)を差し引いた金額が当期純利益です。

倒産の危険がない赤字と、倒産の危険がある赤字

同じ赤字の企業でも、倒産の危険がある赤字と、倒産の危険がない赤字があります。その違いは、主に営業利益がプラスかどうかになります。

営業利益 = 売上高 – (売上原価 + 販売費および一般管理費)

営業利益は企業の基本的な収益力を示す指標であり、「本業でいくら稼いだか」を示します。営業利益には税金や金利、その他の財務的な要素は含まれていません。

倒産の危険がない赤字

  1. 営業利益はプラスだが、減価償却や固定資産売却損のような、お金の出ていかない経費が多いため、赤字となった
  2. 営業利益はプラスだが、役員退職金など一時的な支出が多いため、赤字となった
  3. 営業利益がプラスだが、将来への投資が多いため、赤字となった

倒産の危険がない赤字は、上記のような営業利益がプラスの赤字です。
営業利益がプラスであれば、ほとんどの場合、一時的な赤字です。その年が赤字だとしても、現状のままで黒字にする能力がある企業だと判断できます。
例えば、役員の代替わりで、役員退職金として数千万円の特別損失があり、多額の赤字となってしまったとします。このような特別損失により大赤字となっても、営業利益がプラスであれば倒産の危険はありません。

また、保険契約のように顧客獲得コストが高いために、初年度は多額に計上されて営業利益が赤字になる場合があります。この場合のように、LTV(生涯顧客価値)が高く、その後利益が年々増加するビジネスモデルの企業であれば、一時的なものと判断できます。

倒産の危険がある赤字

倒産の危険がある赤字は、営業利益がマイナスの赤字です。当期純利益が黒字の場合でも、営業利益がマイナスで、補助金や賃貸収入等の雑収入(営業外収益)のおかげで黒字になっている企業は倒産の危険があります。特に補助金のおかげで黒字となっている場合は、補助金が無くなったら危険です。補助金が無くなる前に、営業利益がプラスになるように手を打つべきです。

営業利益がプラスの場合もマイナスの場合も、資金繰りには注意してください。そもそも倒産とは、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態のことを指します。支払いに必要な現金が不足し、債務が弁済できなくなると倒産となります。どんな場合でも資金繰りには気を配る必要があります。

赤字経営から脱却し立て直しを図る方法

赤字経営から脱却し立て直しを図る方法は、以下の順で行います。

  1. 資金繰りの改善
  2. 経費削減
  3. 売上を上げる戦略の実施

それぞれ、詳しく解説します。

1. 資金繰りの改善

赤字経営でもすぐに倒産するわけではありません。現金があれば経営は続けられます。まずは資金繰りを改善する対策を行い倒産のリスクを下げましょう。

自由に使える資金の確保

自由に使える現金は、最低でも毎月の支払いの1か月分は常に確保しておくことをおすすめします。事業運営中に予期せぬ支出が発生することは珍しくありません。例えば、機器の修理や交換、急な経費の増加などが考えられます。十分な現金を確保することで、これらの緊急事態に迅速に対応し、倒産のリスクを下げられます。

融資を見直して毎月の返済額を減らす

銀行等から融資を受けている場合は、借り換えすることをおすすめします。借り換えとは、一度すべて返済してから新たに融資を受けることです。返済出来ない見込みが立った場合や、毎月の返済額が大きく資金繰り悪化の原因となっている場合に有効な方法です。借り換えではなく、融資条件を変更し返済期間の延長とすると、次の融資が受けられなくなることがあるため、注意が必要です。

早めに資金繰り改善を行う

赤字が連続で続いていると、融資の際に貸し渋られることがあります。希望金額よりも少ない金額になるなど、希望通りに融資が受けられない場合もありますので、資金繰りの改善は早めに手を打ちましょう。
また、資金繰りに困った場合は、地方自治体が行う制度融資や、経営改善計画策定支援事業などの支援策の検討もおすすめします。ただし、これらもすぐに融資を受けられるわけではなく、準備に時間がかかるため、早めの行動をおすすめします。

資金繰りの改善方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
参考「中小企業の資金繰りが厳しくなる原因と改善方法」

このように、資金繰りを改善しても、営業利益がずっと赤字のままでは、倒産のリスクは避けられません。あくまで資金繰りの改善で出来ることは、倒産までの時間を稼ぐことです。確保した時間で経営改善を行い、営業利益を黒字にする戦略を立てることが重要です。

2. 経費削減

次に、経費削減を行います。まずは現状何にいくら使っているのかを把握します。過去の決算書から、固定費の「人件費、家賃、広告宣伝費、保険料、リース料など」と、変動費の「原材料費、外注費、手数料など」に細分化し、各科目にいくら使用しているのか確認します。そして、家賃が高すぎないか、不要な保険に加入していないか、水道光熱費や通信費は別のプランの方が安くないか等、一つずつ内容を見直ししていきます。

注意したいのは、経営に悪影響を与える経費削減です。従業員の削減によるサービス品質の低下や、製品に使用される部品や原材料を安価な物に変えることによる製品品質の低下により、顧客満足度が下がり、顧客離れを招く可能性があります。特に人件費は経費の中でも大きな割合を占めることが一般的ですが、モチベーションの低下や優秀な人材の流出、生産性の低下など、悪影響を与える可能性が高いため、人件費削減は最終手段と考えましょう。

経費削減について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

3. 売上を上げる戦略の実施

次に、売上を上げる戦略を立てます。経費削減だけでは、赤字額を縮小させることは出来ても、黒字に転換することは難しいです。経費削減をした上で、少なくとも当期と同じ売上は見込めると仮定し、あといくら売上を上げれば黒字になるのかを算出します。また、現状のまま行くといつ資金が無くなるのか、損益分岐点を出してどのくらい売ればいいか等も予測します。そして、それら数字を基にいつまでにいくらの売上にするのか等の目標を立て、戦略を立てていきます。

収益改善について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

売上高 = 訪問者数・営業件数 × 成約率 × 客単価

売上を構成する要素には「訪問者数・営業件数」「成約率」「客単価」の3つがあります。また、長期的な売上を構成する要素には、この3つの要素に「リピート率」も加わります。これら要素をそれぞれ向上させる必要があります。それぞれ具体的に解説します。

訪問者数・営業件数を上げる方法

訪問者数・営業件数を上げる方法を以下の2つご紹介します。

  • 販路の拡大
    実店舗、訪問販売、フランチャイズ、鉄道や百貨店の催事、オンラインショップ、アプリなど様々な販路があります。オンラインショップであれば別のモールへ出店したり、既に催事に出店したことがあれば別の企業の催事に出店してみたりするなど、新たな販売チャネルを活用して、顧客にアクセスする機会を増やします。
  • 広告宣伝
    SNS(Instagram・twitter・TikTok・Facebook・Line)を活用しターゲット顧客とのコミュニケーションを強化したり、新聞・雑誌・Web広告などをターゲット顧客に合わせた媒体で広告を出したりして、新規顧客を増やします。

成約率を上げる方法

訪問者数・営業件数を増やしても成約率が低いと、その努力が結果に結びつきにくいことになります。成約率が低い場合は、その理由を調査することも重要です。成約率を上げる方法を以下3つご紹介します。

  • 購入までの導線の見直し
    オンラインショップであれば、ウェブサイトやショッピングカートの使いやすさを向上させ、購買プロセスをスムーズにします。商品情報の明確な提供や評価・レビューシステムの導入も重要です。
    実店舗の場合は、入店時に見える位置に力を入れている商品を配置したり、レジ前に衝動買いを促すセール品を配置したり、買い物の流れに合わせて商品を展開することも重要です。
  • 試用版やデモを提供する
    顧客に製品やサービスを試す機会を提供し、商品の魅力を実感してもらい購買意欲を高めます。その際にアンケートを行うことで、成約率改善のアイデアを引き出すことができます。
  • クーポンの配布やキャンペーン
    その場で使えるクーポンの配布や、オリジナルグッズ特典などのキャンペーンを行い、購買意欲を高めます。クーポンやキャンペーンなどは配布量と使用量の集計を行い、「どれくらいの割合で使ってもらえたか」などの情報を分析し、成約率改善に役立てることができます。

客単価を上げる方法

赤字の場合に客単価を上げる方法として検討したいのは、値上げです。顧客離れを恐れて値上げに踏み切れない経営者もいますが、近年は、原材料費の高騰、円安、世界情勢などの影響で物価が高騰しているため、理解が得やすい状況です。顧客に理由をしっかり説明した上で値上げをすれば、500円の商品を10%(50円)値上げして550円となっても、顧客が離れることはありませんので、思い切って値上げを行うことをおすすめします。特に消費税などの税金が上がるタイミングは値上げを検討することをおすすめします。

値上げ以外の方法として、顧客1人あたりの売上単価を上げるアップセルとクロスセルという手法があります。

  • アップセル
    すでに自社の商品を検討している顧客や以前購入した顧客に対し、検討中の商品より高額なランクの高い商品を提案する手法です。
  • クロスセル
    すでに自社の商品を検討している顧客や以前購入した顧客に対し、検討中の商品と、別の商品をセットや単品で提案する手法です。

リピート率を上げる方法

新規顧客を獲得することは、既存顧客に販売するよりもコストがかかります。新規顧客を獲得した後は、一度売って終わりではなく、繰り返し購入してもらい顧客生涯価値(LTV)を高めることが重要です。リピート率を上げる方法を以下2つの方法をご紹介します。

  • 長期的な顧客関係を築く
    ポイントカードや会員特典などを提供し顧客の忠誠心を獲得します。
  • 顧客満足度を向上させる
    購買後のサポートや顧客対応を強化します。また、アンケートなどでフィードバックを収集し、顧客の要望や不満を理解し、サービスや商品の改善を行います。

まとめ

赤字経営から脱却し立て直しを図るには、資金繰りの改善、経費削減、売上を上げる戦略の実施が必要です。立て直しには時間がかかる場合もあります。焦らず、着実な改善を目指しましょう。経営状況を冷静に分析し、必要な措置を講じることが成功への第一歩です。

また、商工会議所や税理士など第三者の意見を取り入れることも有益です。専門家による客観的な視点からの助言は、新たな視点を提供し、立て直しの手助けになるでしょう。

最後に、赤字となってもすぐには倒産しませんが、そのまま続くといずれは倒産が見えてきます。今までのやり方を変えるのは簡単なことではありませんが、倒産となる前に、必ず黒字体質にしようという覚悟を持って取り組む姿勢が重要です。事業の現状を冷静に見つめ直し、必要な改革を行いながら、持続的な成長を目指しましょう。

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