税務調査は中小企業も対象?どこまで調べる?調査内容を徹底解説
「税務調査ってなに?」
「税務調査は中小企業も対象なの?」
税務調査について、このような疑問を抱えている経営者もいるのではないでしょうか?
簡単に説明すると、税務調査とは納税者がきちんと申告納税しているかを確認することをいいます。しかし、会社を設立したての経営者の方の中には、税務調査がどんなものなのか詳しく把握していない方も多いはずです。
そこでこの記事では、税務調査がどんなものなのかを詳しくご紹介し、対象となる会社や調査内容について解説します。
そもそも税務調査とは
冒頭でもお伝えした通り、税務調査とは、国税庁や税務署職員が納税者の申告が正しいかどうかを判断するために行う調査です。
日本では、法人税や所得税など数多くの税金を、納税者が自ら税額を計算して申告・納付する「申告納税制度」があります。税金の計算ミスや虚偽申告の可能性があるため、それらを防止するためにも、税務調査は必要となるのです。
そんな税務調査ですが、主に以下2つの調査に分けられます。
- 任意調査
- 強制調査
2つの調査について、詳しく解説します。
任意調査
任意調査とは、事前に調査する旨の連絡がくる調査方法となり、一般的な税務調査のやり方です。
調査は「任意」ですから、基本的には断ることもできます。ただし、税務署の職員には税金についての質問が行える「質問検査権」が認められており、調査される側は質問検査権に黙秘権を行使することができません。
実際に、法律でも明記されており、従わなければ何かしらの罰則を受ける可能性があります。
《国税通則法第74条の2》次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。一 第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者三 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者引用元:e-Gov法令検索「国税通則法」 |
基本的には、税金に関する質問には応じるようにしましょう。
強制調査
一方、強制調査とは任意調査とは異なり、事前の連絡がなく急に調査されるやり方です。「マルサ」と言われる国税局査察部が担当しています。
脱税の疑いがかけられている納税者が対象となり、以下のような場合に強制調査が行われます。
- 脱税金額が1億円を超え、尚且つ悪質な隠蔽工作がなされたと想定された事例に限る
査察部で行われる強制調査は、納税に関する資料を押収できる権利があり、調査対象となる会社はこれを拒否することはできません。
マルサは、100人以上もの調査官が動き、会社や経営者の自宅などを一斉に調査することになります。仮に強制調査で脱税が発覚した場合、検察庁に告発され、刑事事件となります。
税務調査は中小企業も対象?調査される会社の基準とは
中小企業を設立したばかりの経営者の中には、中小企業は税務調査の対象になるのか疑問に思う方もいるでしょう。
結論から申し上げると、中小企業も対象になる可能性は十分にあります。
そもそも税務調査は、10年以上こない企業もいれば周期的にくる企業も存在します。一般的には4〜5年に1度に行われますが、明確には定まっていないのが現状です。
しかし、税務調査されやすい会社があるのも事実です。ここでは、税務調査となりやすい会社の特徴をご紹介します。
- 会社の売上が急速に伸びている
- 同業他社よりも所得率が低い
- 過去に不正事案が多い業種に該当している
- 目立つ行動をしている(SNSなど)
- 規模が大きい会社
それでは、順番に解説します。
会社の売上が急速に伸びている
税務調査の対象となりやすい会社の1つ目は、売上が急速に伸びていることです。会社の売上が急速に伸びていると、その分税金も増えるため、税務調査官から狙われやすくなります。
「本当に税金はあっているのか?」「過少申告していないか?」などと疑問を抱き、調査対象となるのです。
短期間で会社の利益の振れ幅が大きい場合は注意しましょう。
同業他社よりも所得率が低い
税務調査の対象となりやすい会社の2つ目は、同業他社よりも所得税率が低いことです。税務署では、毎期の所得率を確認するため、所得率が高い・低い会社を全て把握しています。
そのため、所得率が低い会社は、「利益をごまかしているのではないか?」と疑われがちです。
また、税務署は同業他社との所得率とも比較しています。同業他社より低い所得率の会社は税務調査の対象となるため、あらかじめ把握しておきましょう。
過去に不正事案が多い業種に該当している
税務調査の対象となりやすい会社の3つ目は、過去に不正事案が多い業種に該当している会社です。
過去に不正事案が多い業種は、「これらの業種はいい加減だから」といった理由で税務署から目をつけられます。
特に風営業は、現金を多く取り扱う業種でもありますから、違算や誤算が多い業者です。風営業を含む不正事案が多い業種は、昔から税務申告作業がいい加減と言われるため、税務署も警戒している傾向があります。
もし、自分の経営している会社が、過去に不正事案が多い業種に該当している場合は、税務調査が必ずくると思い込んでいる方が良いでしょう。
目立つ行動をしている(SNSなど)
税務調査の対象となりやすい会社の4つ目は、目立つ行動をしている納税者です。税務調査官は、調査を行う前に対象となる会社や個人に向けて事前調査を行います。
その内容として、近年ではSNSがチェックされるようになっているとのことです。
例えば、YouTuberが動画内で収益報告をしているのを税務職員が見つけた場合、その情報を参考にし、調査対象としてマークされるようになります。
他にも、会社の業績が良いからといって、高級車に乗っていたり高級マンションに住んでいたりなど、目立つような行動をSNSに乗っけると、目をつけられやすくなります。
行き過ぎた言動や行動などをSNSに載せると、税務調査の対象となりやすいため、気をつけましょう。
規模が大きい会社
税務調査の対象となりやすい会社の5つ目は、規模が大きい会社です。規模が大きな会社は、顧客との取引金額も大きくなるため、比例して納税額も多くなります。
ここでいう規模が大きい会社とは、以下のような企業です。
- 売上が100億円を超えている
- 外注や仕入れなど、物とお金の動きが極めて激しい会社
- 経費となる金額が極めて大きい会社
上記のような会社は、税金の申告が不適切な場合があるため、税務署も警戒しています。あらかじめ自分の会社の売上や取引先との取引金額などを確認し、会社の規模感を把握しておきましょう。
税務調査はどこまで調べる?中小企業の調査項目
まだ税務調査を経験したことのない経営者の中には、調査内容について知らない方も多いでしょう。
税務調査の日程が正式に確定するまでに準備をしておくことで、スムーズな調査ができるようになります。
そのためには、どんなことが調査されるのか事前に把握しておく必要があります。ここでは、以下4つの調査項目をご紹介します。
- 売上と経費の計上時期
- 人件費の内容
- 交際費の内容
- 外注費の内容
次から順番に解説します。
売上と経費の計上時期
まずは、売上と経費の計上時期の確認です、特に会計期間内の売上額が増加すると、所得金額も比例して増え、その分税額も増えます。
仮に、来期の売上にスライドさせるとなると、納税額が減り脱税していることになります。
事務処理のミスや勘違いで計上時期のミスはありえますが、税務調査官によっては、意図的に行われたのではないかと思われかねません。
税務調査では、売上と経費の計上時期は必ず確認されるようになっているため、ミスをおお×こさないように確認しておきましょう。
人件費の内容
人件費の内容も、調査内容の対象となり、税務調査で最も入念に調査される項目です。
従業員を雇用する場合は、対象の従業員の住所や氏名を市区町村に報告するのですが、仮に架空の人件費を計上した場合、すぐにバレるようになります。
正社員であれば、給与が決まっているため、不正するのが難しいですが、パートやアルバイトは固定されていないため、架空で計上することが可能です。
これにより、パートやアルバイトなどの人件費は入念にチェックされます。人件費の内容もしっかりと確認しておきましょう。
交際費の内容
税務調査の項目には、交際費の内容も含まれています。具体的には、交際費に該当する書類に虚偽がないか、適切な交際費なのかを確認します。
特に交際費は、「事業に必要な費用」と「プライベートで使用したお金」の線引きが難しいです。
総勘定元帳や領収書などから交際費に該当する費用をまとめて、その内容を細かく経理や経営者に質問しながら、内容を調査します。
また、税務上において計上できるのは年間800万円までとなります。中小企業で交際費が年間800万円を超えることはそう多くはありませんが、上限金額はあらかじめ把握しておきましょう。
外注費の内容
外注費の内容に関しましても、税務調査の項目です。外部の業者や個人に業務を依頼することは、ビジネスを行う上でよくあることですが、外注費もしくは給与のどちらかで処理されるようになります。
外注費の場合は、契約書の締結、支払額の基準が必要です。一方、給料として支払う場合は、源泉所得税を差し引いたり消費税は外注費の場合も。
このように、外注費か給与かで追徴課税が発生するケースがあるため、事前に確認しておく必要があるでしょう。
まとめ
本記事では、税務調査がどんなものなのかを詳しくご紹介し、調査内容について解説しました。
税務調査は、基本的には任意調査となりますが、税金に対する質問には必ず応じなければなりません。
一般的に4〜5年に1回行われますが、中小企業でも税務調査がくることも考えられます。特に売上が急速に伸びていたり所得率が低かったりすれば、狙われやすくなるため、税務調査がいつ来ても大丈夫なようにあらかじめ準備しておきましょう。