税務調査の流れとポイント│落ち着いて対処するコツ
税務調査を受けると聞くと、「何か忠告されて追加で税金を払わなければならないのでは」と思われる方も多いのではないでしょうか。
税務調査は、国税通則法や法人税法に基づき、事業規模に関係なくランダムに行われるのが一般的です。そのため。いつあなたの会社や事業所得に税務調査が入っても不思議ではないのです。
しかし、知識や経験がないと、税務調査に適切に対応できない可能性があるため、事前にしっかり準備を整えておくことが重要です。
この記事では、税務調査の概要、内容、注意点、税務調査の負担を軽減する方法について、詳しく解説していきます。
事前に監査内容をイメージしておけば、いざというときに精神的にも時間的にも余裕ができます。
「事前通知のある税務調査」と「無予告の税務調査」
税務調査は、大きく2種類に分かれています。
以下、2つの手続きを簡単に説明します。
事前通知のある税務調査
事前に税務署から通知があり、税務調査の予約をいつまでに取るか尋ねられます。
なかなか連絡がつかなかった場合は、税務調査官がいきなり事業所や自宅に現れることもあります。それでもなお連絡がつかない場合、納税者に再連絡を求める手紙を送ります。
その手紙は「無視」しておけば、税務調査を回避できると書いている人もいますが、不可能です。むしろ、意図的に手紙を無視していた場合、悪い結果になる可能性が高まってしまいます。
通知が来た際に焦らないためにも、顧問税理士をつけておくことをおすすめします。
無予告の税務調査
事前の電話連絡や資料もないまま、ある日いきなり調査官があなたの事業所を訪れ、税務調査が始まるケースもあります。
この抜き打ち調査は、事前に日時を通知すると、調査官が正しく所得を判断できなくなる恐れがあると、税務署が判断した場合に実施されます。
その例として、飲食店などの現金商売である事業運営が挙げられます。
これは、売上が銀行の元帳で処理されないため、本当の売上金額を隠している場合があると考えられるためです。
税務調査の流れ
ここからは税務調査について、調査開始から終了までの一連の流れ、具体的な作業内容、留意点などを順を追って説明します。
税務調査の流れ1:税務署による事前通知
税務調査が行われる前に、基本は税務署から事前通知の電話がかかってきます。
調査官から訪問日を聞かれる形になりますが、後日変更の申請もできるので、すぐに決定する必要はありません。
顧問税理士がいる方で、「税務代理権限証書」の「税務調査の通知への同意」にチェックを入れている方は、顧問税理士に連絡します。
税務調査の流れ2:顧問税理士との面談を予約する
事前通知を受けたら、できるだけ早く税理士にアポを取ってください。
税務調査において明らかにされるべき事項はとても多く、プロの会計士や税理士でも間違いを犯してしまうことがあります。
税務調査前に、可能な限りすべての疑問を解消しておきましょう。
税務調査の流れ3:課題に取り組む
顧問税理士と話した上で、対応しなければならない事柄が出てくるでしょう。
税理士に相談しながら、一つひとつ取り組んでください。
またここでは必ず、税務調査に必要な書類を整理しておきましょう。
書類に不備がある状態で税務調査が行われると、税務調査が長引くだけで、どちらにとってもメリットはありません。
最初から必要な書類を揃えておけば、税務署の調査官にも好印象を与えられます。
税務調査の流れ4:現地監査
調査員が事業所や店舗を訪問し、現地調査をします。
スケジュールは通常、以下の通りです。
【1日目の午前中】
経営陣とのディスカッション。
会社概要、取引先、銀行、経営者の趣味などを尋ねる。
【1日目午後~】
添付資料をもとに「売上高」「収入」「外注費」「給与」等の金額が大きいものから順に調査開始。
税務調査官は起業家に質問をして、税金を否定する対象を絞り込む。
【2日目の夕方】
税務調査の結果、今後の方向性などを話し合う
当日になって焦らないためにも、事前に話す内容を顧問税理士と打ち合わせておくことをおすすめします。
税務調査の流れ5:現地監査後の質問対応と問題点の話し合い
現地監査が終わると、税務調査官から審問があったり、追加書類の提出を求められることがあります。
専門的な知識がないと、うまく質問に答えられないケースも多いので、顧問税理士に立ち会ってもらうのがベストです。
税務調査の流れ6:修正申告・更正手続き
税務調査の結果、修正申告の提出を求められた際には、税理士と話し合った上で書類作成手続きを進めましょう。
税務調査では、誤りがある箇所に関して修正申告を行うよう告げられます。しかし、不満や納得できないなどの理由で、納税者が対応しない場合は、税務署側が更正を実施します。
税理士と話し合い、どのような対応をするかを十分に検討してください。
税務調査の流れをスムーズにする方法
ここからは、税務調査の流れをスムーズにする方法を紹介します。
いざ税務調査が入るときに焦らないためにも、ぜひ抑えておいてください。
帳簿等を見つけやすいようにしておく
台帳、領収書、請求書、納品書など、監査対象となる書類は、入手しやすい形で保管しておくことが望ましいです。
また、顧問税理士への事前連絡もしておきましょう。
税務調査は通常顧問税理士を通じて伝えられますが、税務署から直接連絡があった場合は税理士に連絡しましょう。
税理士は、会計の細部にまで精通しています。
疑問点は税理士に聞けば解決する場面も多いので、安心して任せることができます。
不用意な発言に気をつける
税務調査は、取引の処理が税法に則って正しく行われているかどうかを判断する「解釈」の戦いです。
監査の結果はその解釈次第なので、何気ない一言が後々トラブルの元になることも少なくありません。
調査官の質問に対する答えや、何気ない世間話も深いところまではせず、不用意な発言をしないように注意を払ってください。
資料だけでなく、経営陣の発言も重要な判断材料になることが多いのです。
税務調査後に影響があること
では、実際に税務調査が終わった後に、どのような影響があるのでしょうか。
大きく2点をピックアップし、説明します。
修正税額は高額になる傾向がある
通常、修正後の税額は高くなります。
税務調査は通常3年前まで遡り、悪質と認められる場合は、最長で7年前までの申告内容を確認調査されます。
そのため確定申告書に数年分の誤りがあると判明した場合、修正すべき税額が高くなります。
未納があると銀行融資が不可になるケースがある
多くの税目で延滞税、過少申告加算税が発生するため、支払うべき加算税の総額は通常、高額になります。
場合によっては、未払い滞納によって銀行融資が不可能になることもあります。
加算税が一括で支払えない状況になってしまったときは、税務署と交渉することができ、分割払いに変更が可能です。
加算税や延滞税が一括で支払えない場合、納付について税務署と交渉することができるので、顧問税理士に相談することをおすすめします。
しかし、税金を払わない限り、金融機関への新たな与信の申し出は断られることが多いです。
一度滞納が発生すると、完全解決までの道のりは非常に長いのが一般的です。
また延滞が発生し、融資が受けられなくなると、事業展開に重大な支障をきたす可能性があるため注意してください。
税務調査時に調査官が見るポイント
税務調査で調査官がチェックする点を知っておくと、日々の実務でミスを防ぐことができます。ここでは税務調査時に見られるポイントを解説していきます。
何度も発生する販売時期のズレ
売上に関する項目は、税務調査の初期段階で最もよく調査される項目です。
会社の預金口座に入金されるべき売上高が、帳簿外の口座に入金されていたり、取締役の個人口座に入金されるなど、何らかの方法で売上高が正しく計上されていないケースもあります。
売上を翌期に繰り越すパターンについては、常にチェックが必要です。
例えば、3月が期末の会社が3月に商品を納品した場合、3月に売上を計上しなければなりませんが、4月に計上時期をズラした場合などがこれにあたります。
調査員は、実際の納品日が3月なのか4月なのかを確認し、調査官は、納品書と物品受領書を用いて、売上が計上された日付の妥当性を確認します。
在庫の計上漏れ
調査官は、在庫商品の計上漏れがないかも確認します。
在庫を大量に抱えているのにもかかわらず、棚卸の際に確認が漏れてしまうと、相当の金額を納められずに、税金の過少申告になってしまうためです。
また、棚卸資産リストの改ざんが行われていないかなど、詳しくチェックされることもあります。
税務調査の負担を軽減する方法
税務調査に対してネガティブなイメージをお持ちの方もいると思いますが、正しく経営をしていれば、特に指摘をうけるような点はなく、むしろ企業として良い印象を与えるチャンスになるのです。
税務調査をできるだけ手間をかけずスムーズに行うためには、日々の会計記録を正しく保管しておくことが重要です。
これにより、適切な税務申告を行うことができるようになります。
まとめ
今回は、経営者なら誰もが一度は気にしたことがあるであろう税務調査について、調査の種類や一連の流れ、調査時に気をつけるべきポイントなどを解説しました。
税務調査で申告漏れが発覚した場合、過少申告加算税といった付帯税が発生し、金銭による納付が困難な場合、資産を差し押さえられてしまう可能性もあります。
大なり小なり指摘はありますが、今後の適切な対処に役立つはずです。
調査が入ったときに慌てないように、日頃の経理処理をきちんとした上で、顧問税理士をつけることをおすすめします。
税務調査に関して不安のある方は、以下からお気軽にお問い合わせください。