相続税の税務調査の対策は?リスクを軽減する方法とよくある質問を徹底解説
この記事を読んでいる方は、
「相続税を申告するのだけど、税務調査は避けたい」
「相続税関係の税務調査を行うと言われたが、どうすればいい?」
と思っているのではないでしょうか?
ご安心ください。
相続税の税務調査とは、何の通知もなく自宅等を調べられるということではありません。事前に連絡が入ります。
こちらの記事では「相続税における税務調査」について詳しく紹介していきます。
- どんな場合に実施されるのか?
- どの程度の確率で調査されるのか?
等の、押さえておくべきポイントを解説します。
また、相続税の税務調査の影響を受けやすいケースとはどういったものなのか?具体的には何に気をつけるべきか?といった重要なポイントもしっかり確認しておきましょう。
上記の内容に注意し、きちんと相続税の申告を行えば、税務調査のリスクは下がります。
既に税理士に相続税の税務調査を依頼している方は、今回記述する内容をしっかり把握し、それを踏まえて正しい申請ができるように気を付けましょう。
1.相続税における税務調査とは
ここでは税務調査の基本的な内容を紹介します。
どの程度の確率で調査が入るのかなど、必ず知っておくべきポイントになります。
1-1.監査の内容
真っ先にチェックされるのは「申告内容は適正か」という点です。
税務署は相続に関する情報を入手しています。
では、その情報とは何でしょうか?
例を挙げると、
・現金、預貯金
・土地や不動産の所有権
・有価証券
・生命保険の契約状況
このような内容です。
上記はあくまで一例であることを覚えておいてください。
税務署は、相続税の申告書に記載された内容と実際の情報に相違がないか、かなり厳密に確認し、申告内容に疑義があれば調査を実施します。
なお、調査は大きく2種類に分けられます。
1)「自主的」な調査
いわゆる任意調査と呼ばれるものです。
聴取を受ける人が事前に税務署に連絡をし、日時を指定して聴取します。
場所は、故人または遺言者が最後に住んでいた自宅であることが多く、可能な場合はすべての相続人に、不可能な場合はできるだけ多くの相続人をこの場所に集めます。
また、任意調査は税理士の立ち会いも許可されています。
場合によっては預貯金通帳や土地登記簿の記載事項などの書類を調べる、といった流れが一般的です。
ただ、「任意調査」ではありますが、原則として拒否することはできません。
何度も拒んでいると、後から強制捜査が行われることもあります。
2)「強制的」な調査
強制調査が行われるのは、悪質で意図的な脱税をしようとしている疑いがある人や、任意調査を拒否した人です。
想像しやすい例としては、テレビや映画で見かける「マルサ」でしょうか。
国税庁の査察官が家宅捜索をするシーンは、強制捜査に近いと言えます。
ただ、強制捜査が行われるのは極めて稀なケースです。
ほとんどは任意捜査で解決するので、そこまで心配する必要はありません。
2.税務調査が実施されやすいとされる具体例
相続税の申告に誤りがあるのではと判断された場合、税務調査が行われることが多いです。少額の相続を申告した場合もそれを疑われることがあります。
ここからは具体例を見ながら、税務調査に繋がる可能性があるケースを紹介します。
2-1. 確定申告に不備がある
計算ミスがあったり、誤った申告がなされていた場合やた添付書類の不備等があった場合も、監査の対象となります。
故人の預貯金や不動産等の資産、そういったデータを税務署は詳細に把握しています。
ただ、現実には不備や計算ミスが軽微なら、電話連絡だけになる。
2-2.相続財産が2億円以上
相続財産の総額が2億円を超えると、税務調査が入る確率が一気に上がります。
理由としては、相続財産が高額になればなるほど、その分ミスや記入漏れが発生する危険性が高まるからと言えるでしょう。
単純な計算ミス以外にも、不動産の所有権、有価証券、高額な美術・宝飾品、故人の財産など、そのような点で評価誤りを疑われる場合もあります。
2-3.相続財産に多額の預貯金や現金がある
相続財産が多いケースの他、預貯金額が高額な場合にも、注意が必要です。普通預金からの高額の入出金も調査対象となります。
理由は複数ありますが、まず、不動産の評価額を算出するのはかなり複雑で、「解釈の違い」がクローズアップされてしまい、申告書に明確なギャップを示すことが難しいという点が挙げられます。
ですが、預貯金の場合は曖昧な金額ではなく、明確な金額が確認できますので、容易に申告漏れを発見できてしまうケースが多いです。
加えて、預貯金の入出金が多くあると、遺言者が相続税を避けるために生前に資産を移動させたのでは?という疑いが出てきます。
個人間で何かを売買したり、金銭の貸し借りをした可能性もありますが、これらは遺族も知らないケースが多く、本人の知らないところでは申告できないため、税務署が調査するのです。
特に注意すべきなのは貸付金です。
貸付金は、返済が終わっていないとしても相続財産としての債権とみなされるため、申告しなかった場合は追徴課税の対象となります。
借入金は相続債務。貸付金なら相続財産としての債権。
2-4.多額のに貸付金に見合う相続財産がない
故人が金融機関から多額の借金をしているにも関わらず、不動産や事業用設備などの対応する資産がない場合にも、税務調査が行われます。
故人の資産を遺族が把握しきれておらず、申告漏れのケースが多いためです。
2-5.暦年での贈与や名義預金が高額
税務調査は、故人の配偶者、子、孫の資産も対象になります。
特に、暦年での「寄付」や「贈与」は、あくまで名目上と判断され、調査されることが多いです。
名義人が故人ではない口座でも、印鑑を故人が保有していたり、代理人では自由に処分できない口座の場合は故人の財産とみなされるため、相続税の申告が必要です。
専業主婦の妻や学生の子供などの、所得が低い相続人、また収入がない相続人の預貯金が多いと、名義預金や生前贈与を受けている可能性が高いとして、税務署が調査することになります。
また、長期的かつ段階的に生前贈与を行うことで、年間110万円まで非課税となる生前贈与の基礎控除があるため、この制度を活用して節税ができるケースも少なくはありません。
しかし、これを毎年定期的に繰り返していると、高額の贈与をするつもりだったのではないかと判断し、一括贈与と同じ分の贈与税がかかる可能性があります。
↑ここがよくわからないです。毎年暦年課税で110万未満で贈与している限り、基本的に問題になることはない。
3. 税務調査を回避する方法とは
「できるかぎり監査は受けたくない」と思う方がほとんどでしょう。
「監査を受けた人の80%が追徴課税されている」と言われているのですから、リスクは最小限に抑えておきたいですよね。
これらを全て実践しても税務調査を回避することは難しいですが、調査時のリスクを下げるためにもぜひ覚えておいてください。
3-1.確定申告は正しく
大前提として、税務調査を回避するためには、まず第一に申告を正確にすることです。
- 相続する財産を把握し、見落としのないよう記入
- 計算ミスがないか必ずチェックする
上記2点に注意して、正確に確定申告を行ってください。
3-2.相続税申告に詳しい税理士に依頼
もちろん自分でも相続税申告はできるのですが、精通した税理士に依頼する方が税務調査を回避しやすいと言えます。プロの税理士の申告は、やはりミスや漏れが少なくなるからです。
また、申告書に税理士のサインが入ることで、税務署からの信頼も高まります。
ですが、税理士にもそれぞれ専門の分野があるため、依頼する時には相続税申告に精通した税理士を探すようにしましょう。
3-3.故人の財産を把握している
相続税の申告漏れの原因として多いのは、故人の財産の概要を遺族がすべて把握できていないことです。
しかし、配偶者さえ知らない財産や、個人間での貸し借り、故人名義の賃貸物件の家賃収入など、財産種類はさまざまであり、すべての情報を正確に押さえるのは難しいでしょう。
全ての相続財産を確認するのはかなり手間がかかりますし、見落としてしまう危険性も大きくなります。
ですが、家族や親族が事前に財産の概要を把握しておけば、開示漏れのリスクを抑えられます。
故人が生前に所持していた資産や口座の種類、預貯金額など、できるだけ多くの情報を知っておくことはとても重要です。
3-4.生前贈与の領収書は残しておくべき
生前贈与を行い、配偶者や子供たちに分割した資産を譲り、相続財産をなるべく少なくするケースが増えています。相続税対策として有効だからです。
この場合は、生前贈与を示した証拠になるものを確実に残しておく必要があります。
現金を手渡しで贈与した場合は、贈与の証拠が残りません。多額の資金が引き出されているにもかかわらず、贈与であるという証明がなければ、調査されるリスクが高まります。
ですので、贈与を受けた人がたとえ家族であっても、銀行振込の場合はその記録を残しておく、または贈与に関する契約書を締結しておくなど、生前贈与の証拠となるものを必ず残しておきましょう。
また、基礎控除の範囲内の贈与だった場合においても、贈与税の申告をしておくことにより、生前贈与を行った証拠になります。
基礎控除の範囲内の贈与だったとしても、贈与税の申告をしておくと、それが証拠になる。
3-5.相続のやりとりを形に残す
被相続人とのやり取りは、口頭で完結させずに、必ず文書にして残しましょう。
相続財産を分割すると、誰が何をどれだけ相続するかによって、それぞれの相続人が支払うべき相続税の金額が変わってきます。
そのため、処理に関するやりとりを形にして残しておけば、正しい金額が支払われたことを明確に証明でき、疑われる可能性を最小限に減らすことができます。
4.税務調査で最も重要となる質問事項
税務調査では色々な質問をされることになります。
故人の経歴や職歴、交友関係や趣味など、質問内容はさまざまです。
特に、名目上預金とされている内容についての質問は、何度も聞かれることでしょう。
ここでは、税務調査でよくある質問を紹介していきます。
1. 名義預金の審査
相続税の税務調査で頻繁に問われるのが「名義預金」です。
相続人以外の名義で、預貯金や株式を所有している人について、入念に調査されます。
名義預金が発生するのは、遺言者である人物が、子や孫の名義で預金口座を開設し、自分の預金であるお金を払い込んだ場合です。
生前に預貯金を配偶者や子などの名義の口座に移しておくと、相続税はほとんどかかりません。←そもそも贈与の対象。相続税は殆どかからないという理由が不明
しかし税務署は、「本当は誰のものなのか?この名義の預貯金は本当に本人のものか?」と疑います。
親と子が合意し、贈与契約に基づいて預金しているのなら問題ないですが、よくあるケースとして、親がこっそり子ども名義の預貯金口座を作り、お金を貯めるといったことがあります。
子どもはそれを知らされず、親が一方的に預貯金を蓄えるのです。
株式や預貯金などの財産を、名義を変えて分配しているだけだと認識されます。
しかし子ども名義の預貯金を運用しているのが本人である場合、贈与契約を行うことはできません。
親が子どもの名義で預金しているといえるので、これは親の相続財産としてみなされます。←「みなされるケースが多い」ではなく、「みなされる」
税務調査において、故人の貯金であることが判明した場合は、相続税の対象となるため、追加で課税されます。
税務署は調査権限を持っており、かなり広範な内容を調べることができます。
そのため、税務署が名目上の預金を調査する場合、事前に金融機関へ問い合わせます。
そこで、親名義と子名義両方の預貯金の入出金の履歴をチェックされたり、出金依頼書の筆跡で見られることもあるので、課税回避は困難といえます。
2. 専業主婦(夫)のへそくり
専業主婦または主夫が、生活費の中から捻出したへそくりを貯めて預金していた場合も、
税務調査では厳しくチェックされます。
専業主婦は自身の収入はないため、「へそくりは家事の対価である」などと主張しても、その主張は通りません。
税務署は原則として、家事に対する報酬を認めていません。へそくりは、亡くなった夫のお金を妻が管理して、相続財産に上乗せしていると捉えられてしまいます。
3. 趣味や交友関係など
税務署から、
「故人はどんな趣味がありましたか?」
「故人はどのような生い立ちで、どのような家族関係でしょうか?」
と問われることがあります。
その質問に対し、「ゴルフが好きな人だ」と答えると、ゴルフ会員権などの財産を所有していると想定され、「サラリーマンとして勤めていた」と答えると、勤務していた会社に利害関係があると想定されます。
何気ない会話の中でも、質問のひとつひとつに深い意味が隠されていることが考えられます。
4. 定期預金の紛失
故人名義の定期預金口座が満期になっていた、または解約されていた場合、定期預金の行方を問われることがあります。
満期を迎えて解約された定期預金とその引き出し金額の記録を、銀行はきっちり残しています。
さらに、税務調査の前にこの記録はすべて判明しています。
引き出された現金は、使い切っていない限りは何らかの資産に変わっているはずなので、税務署は紐付資産を探すことになります。
もしそのお金で、車や不動産などを購入していた場合は、それらを相続した資産についても申告しておかなければなりません。
自宅などに現金が残されている場合は、これについても相続財産として申告が必要です。
「この程度なら税務署にはバレないだろう」と思っていても、税務署はかなりの量の情報を持っているので、隠し通すことは容易ではないでしょう。
定期預金から引き出したお金がその後どういう風に使われているか、できるだけ正確に説明できる状態にしておいてください。
5. 故人を看取った場合
生前に故人が病気を患っていた場合、税務署から「誰が看病をしたか?」「入院していたか?」と問われることがあります。
これは、故人が長期にわたって入院していた場合、入院中に故人の資産が別の人の元に移動されていたり、看病、介護をした人の名義で新たな預貯金口座等が作られている可能性を想定してのことです。
故人を看病、介護した妻や子に資産が贈与されても、贈与税の申告をしないと相続税の対象になります。
贈与税の申告をしていても、相続から3年以内前の贈与は相続財産として再計算されるため、この点も注意してください。
←贈与税の申告をしても、相続前3年以内の贈与は相続財産として再計算される。
また、相続人でない介護者も同様です。
「自分名義の貢献」と主張しても、名目上の貢献者として否認←否認され、相続税の対象となる場合があります。
まとめ
相続税の手続きは、日々の仕事と並行して行うことが難しいことが多いです。
また、後で税務調査を受けた場合、正しく申告していれば、支払わなくとも良かった税金を徴収されるケースも多くあります。
弊社では、長年の申告書作成経験を持つ税理士が、お客様の利益を考えて手続きを行います。相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。