事業承継は税理士に依頼するのが一番!?失敗しないためのポイントも解説

事業承継は、特に中小企業の経営者にとって、近年最も重要な課題の一つではないでしょうか。

高齢化が進み、そもそも後継者候補がいない、会社形態や働き方の多様化に伴い手続きが複雑化するなど、経営者だけではなかなか判断がつかないことも多いと思います。

そのような場合には、専門家に相談することも検討すべきです。

専門家といっても、法律関係は弁護士、監査や会計は公認会計士、登記は司法書士など、さまざまな専門家がいます。

では、事業承継に関連して、どの専門家に相談すればよいのでしょうか?

事業承継には、税務の知識が必須であることから、税理士への相談が最適なのです。

例えば、会社が同族会社で、家族や親族に承継する場合は、相続税や贈与税に配慮する必要があります。

また、第三者に売却する場合は、M&Aによる承継も考えられますが、これも税制上の影響を受けるのです。

今回は、事業承継について税理士に相談する際に抑えておくべきポイントを解説します。

事業承継とは?

事業承継には、大きく分けて親族内承継と親族外承継、そして事業を第三者に譲渡するM&Aがあります。近年、後継者不足に悩む中小企業が多く、役員や従業員に事業を引き継ぐ親族外承継やM&Aが増えています。

事業承継の内容

事業承継の業務内容は、その方法によって異なります。個人と企業の両方の資産に関する知識が必要であり、従業員や取引先を含めると関係者は大きく広がります。

税理士は、財務や税務面に関するアドバイスから親族間の調整まで幅広いサポートをします。

親族内承継

親族内承継では、株式を後継者に引き継ぐことになりますが、その方法は大きく分けて、相続、贈与、譲渡の3つがあります。

税理士の主な仕事は、これらの方法のいずれにおいても発生する税務手続きへの対応です。

また、税務申告の手続きだけでなく、株価に比例して高くなる納税資金の確保や、承継後の経営体制の構築など、事業承継に関する総合的なアドバイスも行っています。

親族外承継

親族に承継されない場合、会社を廃業するか、親族以外に承継させるかの選択となります。

役員・従業員による買収(MBO、EBO)では、財務・税務業務に加え、資本構成、合併等も行います。

M&A

M&Aとは、企業の合併・買収のことを指し、親族内で後継者が見つからない場合の選択肢として挙げられます。

事業承継に必要な知識

事業承継には、会社の資産価値の評価と課税対象額の把握が必要です。非上場会社は、後継者によって評価方法が異なり、相続税対策で会社を売却できないなどの制約があるため、非常に複雑です。

例えば、同族相続の場合は自社株の評価額を下げることで節税対策になりますが、M&Aの場合は評価額を上げる対策が必要です。これらの異なるケースに対応するために必要な主な知識分野は以下の通りです。

  • 自社株(非上場株)の評価
  • 株式譲渡、株式交換
  • 合併・M&A
  • 持株会社、SPC等
  • 相続税、贈与税
  • 相続・遺産分割

これだけの知識が必要となると、専門家を頼らずに行うのは難しいのではないでしょうか。

弊社ではこれらの税務支援に加え、経営相談も行っています。気になる方は無料相談を行っていますので、お気軽にご連絡ください。

事業承継時に税理士に求められる能力

事業承継では、単に代表者を変更する手続きではなく、事業継続を前提に「経営」「資産」「知的財産」を後継者に引き継ぐことが必要です。

そのため事業承継業務には、適正や知識だけでなく、幅広い能力を求められます。

より広い視野で

関係者が多く、利害関係が複雑に絡むため、会社や事業全体への配慮が欠けていると困難が生じることがあります。会社全体を見渡せるような広い視野を持つことが必要といえます。

提案力・交渉力

事業承継には様々な問題があります。その都度、最適な解決策を見出すための柔軟な提案力がなければ難しいでしょう。また、自分の提案に関係者全員の同意を得るための交渉力も必要です。

共感力

人と人との共感は、関係者間の調整と説得の基礎となるものです。相手の立場で物事を考えられることが、事業承継の円滑な進行に直結します。

プロジェクト指向

事業承継に関わる幅広い業務に対応するため、法務、労務、不動産など様々な分野の専門家が集まり、プロジェクトを立ち上げることがあります。

プロジェクトの一員として、お互いの専門性を補っていく力も求められます。

事業承継を税理士に相談するメリット・デメリット

この章では、事業承継を税理士に相談する場合に想定されるメリット・デメリットを解説します。

事業承継を税理士に相談するメリット

事業承継を税理士に相談するメリットは、主に以下の3つです。

  • 顧問税理士は相談しやすい
  • 専門的な知識を持ち、サポートしてくれる
  • 税務に関する専門的な知識を持っている

それぞれ解説していきます。

顧問税理士は相談しやすい

1つ目のメリットは、顧問税理士に相談しやすいということです。前述の通り、税理士は中小企業の経理代行を行っているため、財務面だけでなく経営面でも相談されることが多いです。

そのため、経営者にとっては、顧問税理士に事業承継の相談をしやすいと考えられます。また、顧問税理士に相談すれば、顧問税理士と関係のある専門家やM&A仲介業者を紹介してもらうことも可能です。

専門的な知見によるサポートを受けられる

2つ目のメリットは、専門的な知見に基づくサポートを受けられることです。税理士の中には、数多くの事業承継案件を手掛けており、ノウハウだけでなく専門的な知識も持っている人もいます。

事業承継の経験が豊富な税理士であれば、仲介会社や事業承継者を介さずにサポートを受けることができます。

税制に関する専門知識

3つ目のメリットは、税制に精通していることです。事業承継では、手続きやスケジュール管理だけでなく、節税対策も重要です。

事業承継では、会社の資産を後継者に引き継ぐことになりますが、一般的に会社の資産価値が高ければ高いほど、支払うべき税額も高くなります。

これは後継者にとって大きな負担となるため、できるだけ税負担を軽減するための対策が必要です。

事業承継には税制上の優遇措置や控除があり、専門の税理士に相談することで、効果的な節税が可能になり、納税資金を早い段階で準備できます。

これらのメリットを最大限活かすためにも、できるだけ早めに税理士へ相談をすることをおすすめします。

遅すぎることはあっても早すぎることはないので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

事業承継を税理士に相談するデメリット

事業承継を税理士に相談する場合、メリットだけでなくデメリットも把握しておく必要があります。次に、主なデメリットを2つ紹介します。

  • 仲介サービスなどに頼れない
  • M&Aのスキルがない

仲介サービスに頼れない

一般的に、税理士は依頼を受けた企業の税務・経営に関する相談や業務を請け負います。

税理士同士のネットワークがあるため、事業承継先の企業を紹介してもらえる可能性はありますが、M&A仲介会社が持つネットワークと比較すると、対象企業の数は少なくなります。

そのため、単に税理士に事業承継を依頼しても、税理士が事業承継先企業を紹介できないこともあり、十分なサポートを受けられない可能性があります。

M&Aスキルの不足

2つ目のデメリットは、十分なM&Aのスキルがない可能性があることです。税理士は税務を専門としているため、一般的にM&Aのスキルは持っていません。

M&A仲介業者に雇われない限り、事業承継業務の経験があるだけでは税理士が専門家やアドバイザーにスキルで勝ることは難しい。

このことを理解している税理士は、自ら事業承継の支援を行わず、M&A仲介業者に業務を依頼することが多いようです。

事業承継を税理士に相談するのは得策か?

上記のようなメリット・デメリットを踏まえると、事業承継を税理士に相談するのは得策なのでしょうか。税理士の業務と事業承継の相性という観点から解説します。

事業承継に必要な知識・ネットワーク

税理士は一般的に事業承継に必要な知識・ネットワークを最低限持っています。一方、M&A仲介業者は、事業承継に関する豊富なノウハウとネットワークを持ってます。

税理士によっては知識が不十分なケースもあるため、税理士選びは慎重に行ってください。

事業承継に必要な知識

事業承継には、会社の資産価値と課税される税金についての理解が必要です。事業承継の様々なケースに対応するために必要な主な知識は以下の通りです。

  • 自社株の評価
  • 合併、M&A
  • 株式譲渡、株式交換
  • 持株会社、SPCなど
  • 相続・分割
  • 相続税、贈与税
  • 税理士の仕事と事業承継の相性

事業承継の半数以上は、資本金や節税など金銭的な問題が絡んでおり、税理士の仕事と事業承継は親和性が高いと言えます。

事業承継に関する税務・会計上のアドバイスやサポートは、税理士が最も得意とする分野の一つです。

税理士が提供する事業承継サービス

税理士が提供する事業承継業務には、「事業承継支援」と「株式承継支援」があります。ここでは、この2つの業務について解説します。

事業承継サポート

事業承継を税金の面からサポートするサービスです。具体的には、事業承継に関する相談、会社の評価額の算出などです。

また、顧問税理士によっては、タイムテーブルの策定、事業承継者のマッチング、事業承継戦略の策定といった業務も含まれます。

株式承継サポート

株式承継のサポートは、税理士も行っています。事業承継税制は、株式承継に事業承継税制を適用できる可能性があるため、税理士の専門分野となります。

事業承継税制とは、後継者の税負担を軽減するために、一定の要件を満たした後継者が、相続した自社株について相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。

また、事業承継税制の適用を受けるためには、申請書などの各種書類を作成する必要がありますが、これは経営者をサポートする税理士が行うことができます。

事業承継を税理士に相談する際の注意点

最後に、事業承継を顧問税理士に相談する際の注意点として、以下の3点が挙げられます。

  • 事業承継の準備は早めに行う
  • 各種税制に精通した税理士を選ぶ
  • 事業承継の経験がある税理士を選ぶ

事業承継の準備を早めに行う

第一のポイントは、事業承継の準備をなるべく早く行うことです。後継者が決まっている事業承継は、後継者育成の期間が必要なため、5~10年かかります。

後継者が決まっていない事業承継も可能ですが、後継者探しや交渉に1年以上かかる場合があります。

円滑な事業承継には計画的な準備が必要ですので、早い段階から税理士に相談することが大切です。

各種税制に精通した税理士を選ぶ

次に、様々な税制に精通した税理士を選ぶことです。前述したように、事業承継のためには節税が重要です。

特に事業承継で利用できる税制に詳しい税理士を選ぶことで、納税額を大幅に削減することができます。

事業承継の経験がある税理士を選ぶこと

最後に、事業承継の経験がある税理士を選ぶことです。税理士は税務を専門としており、事業承継の手続きについては専門外のことが多いです。

経験のない税理士を選ぶと、依頼を断られたり、知り合いのM&A仲介会社を紹介されたりする可能性が高くなります。

そのため、事業承継の実績があり、事業承継サービスも行っている税理士を選ぶようにしましょう。

おわりに

自分に合った税理士を見つけるには、まずは相談してみることをおすすめします。

直接話を聞くことで、本当に必要な知識を持っているのか、自分が望む対策をしてくれるのかを判断することができます。

事業承継にお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。事業者にあったご提案をさせていただきます。

事業承継はまだまだ先だと考えているような、40代、50代の方も、ぜひ将来に備えて早めの対応を心がけてみてください。