「私は、高校を卒業してすぐ、飲食業界に入りました。それから33年、ずーっとこの業界です。」
と語るのは、京浜急行の六浦駅前で焼き鳥店「炭火やきとり六浦」を営む植松光徳さん。現在、51才とのことですが、以前は和食の業界で板前をされていて、35才のときから現在のお店を営んでおられます。
どうして板前になったのですか?という問いに、宙を見つめながらしばらく考える…。
「親戚に板前さんがいまして、たぶん、小学校の低学年、法事だったと思うんですけど、料理をする姿や段取り、もちろんその味に喜ぶ人たちを見たことがきっかけかな…」
この仕事していることの理由を、問われて初めて気付いたという表情は、当時の子供のころの表情を見る気がしました。
目次
「炭火やきとり六浦というお店を継ぐことになったのは、たまたまのご縁なんです」
先代が亡くなられて、遠縁だったのですが、板前をしていた自分に話が伝わってきたんです。
なぜか「やらねばならない」という使命感を感じました。でもまさか、和食の板前から、焼き鳥店を切り盛りすることになるなんて…。
― 板前時代、先輩から聞いた話…「老舗(しにせ)とは、師似せという想いの繋がり」
メニューは先代のものを変えたくないんです。先代が作ってきた店、店だけでなく、この店に通うお客さんも先代が残してくれた財産ですから。
「それを継ぐことがここに同じ店を続けていく責任なんです。」
― それでも、開店当時、お客さんが離れていく…。板前と焼き鳥店…扱うものの違いに苦しむことになる。
「助けてくれたのは、この店に通い続けてくれた常連のみなさんでした」
夕方5時に開店することだけが自分にできることと思って続けました。結果、その繰り返しが今に繋がっているんだと思います。
― お店の「味」を継承してくれる師匠は、お客さんだった。
「先代を知らないのは自分だけ。みなさんが知ってる先代を継承していきたいんです。」
師匠は、お客さんだけではないんだ!って。お店、メニュー、道具、ここにあるすべてが、師匠だということに気付いた…というより、感じていったというほうが近いですね。
「先代だったらどう考えるか…この気持ちが、毎日の仕事を支える言葉なんです。」
― お世話になっていた税理士さんが亡くなられたことから、藤間経営コンシェルジュ(以下藤間)と出会うことになる。
紹介してくれたのは幼馴染み。「すごい会社、手厳しいことも言う…でもとても面白い人達のいる会社」という表現は今でもしっかりと覚えています。
お会いすると、ホントにその言葉のとおりの方達でした。
「売り上げが厳しくて、藤間さんとは金銭的にお仕事ができないなぁと思っていたんです。」
藤間さんの「新人スタッフが担当でよければ、ギリギリの金額でやります!」という言葉にのっかりました。すごくうれしかったです。おまけに結局、いつも社長さんが付いてきてくれるんです(笑)。
「自分は想いを行動に移せないところがあるんです」
新しい業務や、集客のアイデアをいただいたり、自分で思い付いたとしても、なかなか一歩が踏み出せない。そんなとき藤間さんは、そこに「数字」いれて表現してくれるんです。数字の変化や予測は、行動に繋がるんです。踏み出すタイミングや、勝負時も教えてくれます。
「漠然とした「行ける」ではなく、数字という確信を持った「行ける!」は、行動することを楽しませてくれるんです。」
失敗してもそれが価値になっていくこと知りました。
「迷ったら、まずやってみる!」藤間さんの最高の教えです。
店の売りだった「牛レバサシ」が販売禁止になったとき、馬刺しをメニューに加えました。
お客さんとしても来てくれていた藤間さんから、
「植松さんの馬刺しを引く姿が美しい…盛り付けも素晴らしい…。板前のスキル、和食の技術をもっとメニューに出していったらどうでしょう。」
店が大きく転換していく発想でした。
― 先代を継承し、お店の色は変えない。ただ、和食のテイストをメニューに加えていくことに。
来てくれていたお客さんが、いつもよりも頻繁に来てくれるようになったんです。
「先代には追い付けないけれど、自分ができることは必ずある!」
先代を、先代の道で超えることはできない…けれど、自分の技術で踏み固めることができること。藤間さんがいなければ気が付けなかったことです。
― 藤間経営コンシェルジュとは消費税8%がはじまった2014年から。
「コロナを乗り越えられたのは、藤間さんのおかげです」
コロナの前から、テイクアウト販売をすすめられていたんですが、やらなかったんです。そしたら、コロナになって結局始めることに。いまではですっかり定着してます。藤間さんの先見の明にはびっくりします。
担当になってもらってから、売り上げは順調に伸びています。売り上げは、知り合ったときと比べると1.8倍くらいになってます。
「お店にお客さんがいないということがなくなったんです。」
売り上げよりも、そのことほうが実感します。お客さんがいるということは、店にとっても仕事をする人間にとっても、最高のモチベーションなんです。
最近では、新規のお客さんも多くなり、そのお客さんが常連さんになってきています。
お客さんがお客さんを連れてくるんですよね。
「藤間さんのアドバイスで、この店が変わることはないんです。」
炭火やきとり六浦は、以前の雰囲気のままだと思っています。目指していることも変わっていないです。
けれど、お店がどんどん良くなっていくんです。そしてそれがお客さんに伝わっていく…。
「老舗というのは、時代時代で味は変わっているんです。でも、お客さんからの印象は変わってない。」
そういう老舗を目指しているし、それを感じてもらいたい。
応援してくれる藤間さんに、老舗といわれる店を見てもらうのがひとつの夢なんです
。
このお店の話が来た時、植松さんが思った「やらねばならない」という気持ち。
その気持ちは今、「やり続けなければならない」に変わっています。
先代の想いを継ぐ植松さんのお店「炭火やきとり六浦」。
これからも多くのお客さんの笑顔を迎えて、「六浦の老舗」というブランドを手に入れることになるはずです。
炭火やきとり六浦
京浜急行 六浦駅 徒歩2分