坂道沿いにある自動車工場。とても明るく、整理整頓の行きとどいた作業スペースには、ところ狭しと修理を待つ車が並んでいる。
「車…実はあんまり好きではなかったんです。」
若いころは、もう死んでしまってもいいというくらいオートバイが大好きだったという話から始まりました。
横浜の旭区にある自動車の修理工場「ウイル」の社長、宮川護さん。2018年創業。
車が好きではないのに、自動車のお仕事を?という問いには、冷静に商売で考えるなら車かなと思い、この業界に就職したとのこと。意外と堅実。
自信満々で話をするこの社長に魅了された社員たちは、親しみを込めて、「マモちゃん」という愛称で呼ぶ。風通しの良さそうな会社の雰囲気は、そろそろ終業という時間にも関わらず、活気に満ち満ちている…
「就職したのはいいんですが、ぜんぜんやる気がでないんですよ…」
19才で輸入車の修理工場に就職したんですが、やっぱりオートバイが好きなので、ぜんぜん仕事に興味が出なかったんです。だから、仕事に全く進歩がないんです。
― そんな時、友人が車で事故を起こし、修理を依頼される。
目次
「受けたのはいいんですが、自分じゃ直せないんですよ」
ボディが大きく凹んでいて、けっこうひどい状態だったんです。それを、同僚の整備士が直していく。見る影もなかった状態の車がどんどんキレイになっていくんです。
もちろん、友人は大喜び!だけど、自分はなにもやってない…とても歯がゆかった…。そんなことから、仕事を覚えなくてはと集中していくことになるんです。
「月並みな言い方なんですが、直った車を見たときのお客さんの笑顔に感動しちゃって…」
自分の直した車がお客さんの笑顔につながるって、スゴイと思いました。それなら、もっと腕をあげたい!、とにかく勉強しました。やる気になるとスポンジのように技術を吸収するもんなんですね。スキルがどんどん上がっていくのが自分でもわかるんです
― 修理工場で10年。起業を考えて、退職。
「もぉ、周り中から大反対されました!」
子供が産まれたばかりということもありまして、止められました!もっと修行しろって(笑)。確かに経営というものを学んでいなかったんですよね。
それなら経営を学ぼうと思って、輸入車ディーラーの面接にいきました。
「ぼくは起業を考えてるので、そんなに長くここにはいません」
こんなこと面接で言う人っているんですかね(笑)。でも、おもしろいやつがいるってことで、就職できたんです。いつものことなのですが、自信満々で話していたので、入社したとたんマネージャーという肩書をもらってしまったんです。
金沢区にある支店に配属されたんですが、仕事のあまりの効率の悪さに、立場を利用してガンガン指示していきました。肩書だけはマネージャーですが、入社したてのまだ30前の若造です。気が付けば全員が敵になってました(笑)
「3ヶ月で売る上げを3倍にしたら、なにも言われなくなりましたよ。」
やっぱり結果をだすと違いますよね。結局みんなが付いてきてくれるようになりました。
運が良かったのかもしれないです。修理工場としての経験値のない支店だったので、ぼくの以前の経験をそのまま導入することができたんです。
面接で、そんなに長くここにはいないって言ったのに、結局16年も務めました。居心地はよかったんですよ。
- 退職後、念願の起業。株式会社ウイル誕生
「明日からこの工場で仕事ができると思ったら…冷っとしました(汗)」
起業することが夢だったので、準備をしている2か月半、ずーっとワクワクでした。
最後に工場の床を塗っていた時です、明日からここで仕事が始まるって思ったとき、急に不安になったんです。工場の完成ばかりに集中していて、仕事が始まるってことを意識していなかったんです。
「最初は、地元の先輩にお願いしていたんです。」
税理士さんを決めないといけない…でも、とにかく最初はお金がなかったんです。
地元の先輩に格安でお願いしていたんですけど、決算月にしか来てくれないんです。
学生時代のサッカー部の先輩だったので、何も聞けない、言えない、頼めない…で、探し始めたんです。
紹介してもらう人もいないので、税理士さんを探すサイトにウチの情報を入れたら、2社でてきました。そのひとつが藤間経営コンシェルジュさん。
もうひとつのところは、税理士さんが200名も在籍している大きな税理士事務所でした。面接に来ていただいた時、藤間さんは社長を含め3名で来てくれました。そこが決め手でしたね。もう一つの所は、担当する方なのか、ひとりで来られたので…。
「こんなに大きな機械が買えちゃったんです!」
助成金や補助金のアドバイスをいただいて、いろんな機械を買うことができました。良い機械は、仕上がりのクオリティのレベルを保つことにつながります。
工場は立ち上げましたが、性能の良い機械はやはり高かったので、なかなか手がでなかったんです。とても助かりました。
「うちはガンガン稼ぐので、ガンガン買って、ガンガン拡大する!」
税理士さんて、終わったことを分析してアドバイスをくれるのが普通だと思うんです。藤間さんは、終わったことではなくて、これからの話をしてくれる。ウチの攻めの体質を理解してくれているので、そういうアドバイスをガンガンくれるんです。
「藤間さんが提案してくれる攻めの戦略は、自分では思い付かない。」
攻めるための戦略を数字で表して説明してくれる。数字はウソをつけないもの…ただ、その数字は人が生み出し、人という財産をどう動かせば良いのかという戦略が出てくるんです。
財務は「人」ということを教えてもらいました。
「借金が億を超えちゃう勢いなんです。」
借金は財産という考え方も教わりました。なので、ウチの体質であれば、借金が増えるのはしょうがない。借金はありますが、藤間さんのアドバイスもあって、今期の売り上げは過去最高になりますよ。
最近は、いっしょにサッカーをやったり、飲みにいったりと、プライベートでも仲良くしてもらってます。ホントに共に走ってくれている感覚があります。攻めの体質を理解してくれているので、もっとやらなきゃという気持ちにさせてくれるんです。
― 宮川社長はたびたび「社員は家族」という言葉を口にします。
「カミさんより長い付き合いのやつもいます、30年の付き合い!」
攻めの体質を維持できるのは、とてつもなく信頼している仲間がいるから。そして、その仲間がいるからさらに頑張れる…。
その仲間のために、なにかをしたいという展望も生まれる。仲間がいなければ、今の自分はないし、この工場もない。
取材中に、宮川社長が社員にかける飾り気のない言葉…。飾らなくても、お互いを理解し思いやることができる「家族感」は、このウイルの一番の宝であることは言うまでもない。
株式会社ウイル
保土ヶ谷バイパス下川井インターから5分